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◆【interlude】◆
そうして少年は去った。
臆病風に吹かれ、逃げるように公園を後にした。
彼は知る由もないが、一見臆病にも見える選択は、その実、懸命な判断だったと言えよう。
何せ、あと数秒遅ければ。
「ふ―――、―――、すぅ……」
私が、ガマンできなかった。
立ち上がる。
がさり、と茂みの揺れる音。
―――微かに目眩がした。
立ち眩みだろうか。
それとも―――が、足りないからだろうか。
吐き気にも似た空腹を感じながら、覚束ない足取りで広場に出る。
整備されたレンガ色のタイルに、自分の足音がコツンと響いた。
良かった、と思う。
せっかく仲良くなったクラスメートを、手に掛けたくなどなかった。
日は落ちているのに、真夏の暑さは衰える気配がない。
気分の悪くなるような熱気を肌に感じる。
体中汗でべたべただった。
早く家に帰ってシャワーを浴びたい。
……だと言うのに。
私の感覚はおかしかった。
暑くて、べたべたして気持ち悪い。
その感覚はあるのに、どうしてか私の身体は震えていた。
寒くて仕方ないのだ。
暑いのに、寒い。
汗が滲むのに、震えが止まらない。
私の身体は矛盾していた。
「……はっ……ぁあ、」
呼吸がうまくできない。
空気中の酸素の密度が妙に薄くて、吸っても吸っても肺に酸素が入ってこない。
いつから地球の酸素はこんなにも少なくなってしまったんだろう。
これもきっと、―――が足りないせいだ。
そう結論づけて、私は獲物を求めて進む。
こつ、こつ。
耳に届く自分の足音が、やけに遠い。
鼓膜にフィルターでもかかっているのだろうか。
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