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二の腕や剥き出しの腿に、耐え難い痒みが生じる。
蚊に食われたのだろう。
自然と手が伸び、爪を立ててかきむしる。
がりがり
がりがり
がりがり
痒い痒い痒い。
痒くてたまらない。
掻いても掻いても、痒みがおさまらない。
見ると、かきむしり過ぎた皮膚が剥がれ、微かに血が滲んでいた。
…参った。
痒み止めでも持ってくるんだった。
後悔しながら、私はもどかしいまでの掻痒感をこらえて進む。
ずりずり。 ずりずり。
いつの間にか、足を引きずるようにして歩いていた。
そうして、噴水の前に辿り着く。
ざばざば、と水の音。
さっきの場所より、幾分か明るいその広場には、私と同い年くらいの男の子が沢山居た。
「ふ―――くぅ――――」
一、二、三、四………全部で十二人。
服装からして、あの不良校と名高い蛇塚高校の生徒だろう。
なるほど。
見るからに柄の悪そうな生徒ばかりだ。
おかしなことに、みんな地面に寝転がっている。
おかしなことに、噴水にぐったりもたれかかっている少年もいる。
おかしなことに、みんな苦しげに呻くばかりで、誰一人として起き上がらない。
―――可笑しなことに。
私のおなかが、くうくう鳴った。
趣味の悪いアクセサリーを、首からじゃらじゃらぶら下げた少年に近寄る。
私より少し年下に見える彼は、痣だらけの顔で、怪訝そうに私を見上げる。
口元が緩む。
腹が潰れるほどの空腹。
堪えようのない飢餓感。
だから私は―――食事を始めた。
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