Chapter1

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「ああ……」 壮絶な快感に吐息が漏れる。 最後に食べてから一週間。 ずっと限界を感じていたけど、これでまたしばらくは大丈夫。 そう、大丈夫だ。 これで今日みたいに、大好きな彼を“食べたい”なんて思うことはなくなる。 癖っ毛の髪に、黒縁のメガネをかけた、線の細い顔つきの彼を思い浮かべる。 騒がしくて下品だけど、本当は誰よりも優しくて、そして心に暗い闇を持つクラスメート。 彼が着替えを覗くなんて、今日が初めてのことじゃないけれど、それでもやっぱり、裸なんて見て欲しくなかった。 空腹のときにそんなことをされたら、勢い余って、彼を――――食べてしまうかも知れないから。 肉にかぶりつき、骨の髄までしゃぶり尽くして、その身体に流れる血を啜る。 光のスパイスが、きっと極上の旨味を引き立てて―――― 「……………」 そこまで考えて、ようやく。 自分がおかしくなってることに気づいた。 落ち着いた筈の呼吸は、更なる餌を求めるかのように乱れたまま。 私はいつからこんな風になってしまったんだろう。 初めて人を食べたあの夜を、私は思い出そうとして―――― 「――――、あ」 また、おなかが鳴った。「あ……ああ………」 タりない。 一人じゃ全然タりない。 周囲には、十一人の少年。 美味しそうな、血と肉と光のカタマリ。 私に食べてくれと言わんばかりに、みんな揃って顔をこっちへ向けている。 恐怖に顔をひきつらせて。 怯えるように後退りして。 ………ああ、なんだ。 おかしいのはやっぱり、おなかが空いてるからなんだ。 この飢餓感を満たさない限り、私は狂ったまま。 だから食べないといけない。 人間にとって、食事はとても大切なことなんだから。 そう結論付けて、私は食事を再開するべく。 正気に戻るために、足を踏み出す。 足元に広がった血溜まりが、ぴちゃり、と音を立てた。 それは、静かな夏の夜。 腹の虫の呻きを聞きながら。 私は、ヒトを食べた。 ◆【interlude out】◆  
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