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◆【interlude】◆
夥しいまでの鮮血にまみれた広場を、彼は見下ろしていた。
役者は既に去った。
残っているのは、血と脂のこびりついたタイルと、そこに飛び散った僅かな肉片のみ。
たった一人の少女による、一方的な虐殺劇。
その一部始終を眺めていた赤髪の小柄な少年は、公園の上空、何もない筈の空間で、然も当然のように歩きながら、静かに独りごちる。
「…随分と派手にやらかしたな」
にも拘わらず、証拠隠滅のため死体を始末するだなんて、随分とマナーの良い前代未聞の『影』だった。
予報では明け方にかけて雨が降るとのことなので、あの惨劇の残り香は跡形もなく洗い流されてしまうだろう。
「一日であんなに喰う奴見たことねえ…。 見た目はあんな大人しそうな女なのに………いや、それよりも」
先刻の光景を思い出す。
データにない、圧倒的な強さを誇る黒髪の少女。
そして毎度のごとく、呆気なく彼女に敗れはしたものの、直後に現れた十数名の人間を一掃した、人間である筈の少年。
巳零を倒したという、その小沢祐の強さに、彼―――琶酉は歯軋りした。
「なにが問題ない、だよ王サマのヤロー。巳零の言う通りじゃねーか」
自分と並ぶやも知れぬ少年の速度に、赤髪の光喰らいは憤る。
あのロクデナシの殺戮男の気持ちが、少しだけ分かった気がする。
アレは――――生かしておいては、危険な存在だ。
暗殺者として訓練を積んできた長年の経験と勘が告げている。
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