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彼の監視を始めてひと月。
察知できる筈のない自分の気配に、微弱ながらも気付きつつある様子の少年。
今はまだ問題ない。
上達したとは言え、せいぜいCランク。 良くてもBの下だろう。
恐れるに値せぬ存在。
殺そうと思えば、それこそ一瞬で事は終わる。
主からの、必要とあらば殺害せよとの命令。
それは直ぐにでも実行すべきものであると、琶酉は改めて実感した。
「…つっても、この街で騒ぎを起こせば『鋼鎖』『紫煙』『硝子』『傀儡』『鈴』、それにあの正体不明の女に、一斉に感づかれんだろーしなあ」
彼は、王や亥断のように圧倒的な実力があるわけでも、叉戌真のように殺されること自体が問題にならないような能力を秘めてるわけでもない。
この街にいるこれだけの敵を相手にしては、到底生き残れまい。
では、どうするか。
答えは一つ。 ここから遠く離れた、彼らの目の届かない土地で、あの少年を死体ごと始末すればいい。
「轟山……。 あの山に行くのは、オマエのカタキを討って、全部が終わった後だと思ってたけどな―――――白己卯(びゃこう)」
物憂げに、そう呟いて。
赤髪の光喰らいは、月の輝く夜空を仰いだ。
◆【interlude out】◆
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