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「祐、ちゃんと持ち物のチェックはした? ハンカチは? ティッシュは?」
「したよ! てゆーか子ども扱いしないでったら!」
「寝る前にはちゃんと歯磨きするのよ? キャンプだからって羽目を外して、女の子のお部屋に夜な夜な忍び込んで……きゃあ、ヤダッ!? 祐がお姉ちゃんの知らないところで大人になっちゃう!」
「朝っぱらから妄想激しいわ! それじゃ行ってくるから、ごはんちゃんと食べとくんだよ。 冷蔵庫にカレーあるから、食べるときは必要な分だけお皿に移して、レンジでチンね。 鍋ごとあっためて、食べたあとほったらかしにしないように。 夏だからすぐ腐るよ」
「もうっ、いつからそんなお母さんみたいなコト言うようになったのかしら。 ……ハッ!? まさかその家事スキルが、女の子たちの乙女心を鷲掴みに」
「…行ってきます」
長くなりそうな話を一方的に打ち切る。
まったく、これではどちらが保護者なのか分かったもんじゃない。
膨れ上がったリュックサックを背負い、僕は自宅を後にした。
天気は快晴。
燦々と日差しの降り注ぐ青空は、絶好のキャンプ日和だった。
集合時間の十五分前に到着する。
駅前のバスターミナルから少し離れた道路の端。
待ち合わせ場所のそこには、三台の巨大なバスと、同じようにリュックやカバンを背負った、盟欄学園の生徒たちで溢れていた。
現代の若者たちの集う街の風景。
皆、当然のことながら私服。
派手な服装から地味なものまで、その種類は様々。
いつも顔を合わせている皆の普段とは違った姿を見るのは、なんだか新鮮味が感じられた。
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