Chapter2

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「ひっ…!?」 「朝一番でケンカ売られるとは。 まさかの展開。 あんびりーばぼー。 なかなかいい度胸。 小沢祐君」 「なななな、なにしてんだそんなとこで、キミは!?」 心臓がひっくり返るかと思った。 頭上の荷物棚から、見晴さんが顔を覗かせ、しかめっ面で僕を見下ろしていた。 「なかなかに快適だったり。 下の席は寒いから。 冷房の風が」 至って真面目に答える見晴さん。 だからって荷物乗せる場所に自ら乗るか。 水色の髪の不思議少女は、鋭い三白眼でジッ、とこちらを見返してくる。 相変わらずなに考えてるのか理解不能。 「…よっ」 身軽な動作で飛び降り、着地する。 ―――視界がおかしくなった。 否、目の前の少女がおかしかったのだ。 彼女の異様な格好に、僕は思わず目を見張った。 「…………暑く、ないの?」 「私はとてもとても冷え性。 むしろ心地良いよ」 いつも通りの、毛糸のニット帽。 それだけならまだいい。 暑苦しいけどまだ許容範囲内。 だが今の彼女は、首もとにマフラー、丈の長い白のダッフルコートを羽織り、足には茶色のロングブーツという異様な出で立ちだった。 どこからどう見ても、冬真っ只中などっかの雪国の服装だった。 見てるだけで暑くなってくる。 体感温度が5℃くらい上昇したような。 「……これからスキーですか、見晴さん」 「遂に暑さにやられたか。 勝手に独りで行ってくるがいいよ」 冷たく告げて、抱きかかえたライオンのぬいぐるみをよしよしと撫でる。 「ほら。 がおちゃんもスキー場、もしくは病院行って来いって」 「……………」 反論しても勝ち目がないことは目に見えていたので、ツッコミとかその他もろもろをまとめて呑み込み、荷物を棚へ押し込む。 仏頂面で、しかし機嫌良さげに口笛を吹く見晴さんを横目に、ため息を一つ。 僕は自分の席に腰を下ろした。
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