454人が本棚に入れています
本棚に追加
車内が徐々にざわついてくる。
外にいた生徒たちが乗り込んできたのだ。
立ち上がってバスの中を見回すが、美鈴はまだ来ていないようだった。
「鈴っちは遅刻か? 小沢祐君」
身長が足りず、背伸びしても前も後ろも見えない見晴さんが、アーモンドのチョコをカリカリかじりながら訊ねてくる。
一つ貰おうと伸ばした手が、ピシャリと叩かれる。
「うん…。 あの髪は目立つから、いたら一発で分かるハズなんだけど」
それ以前に美鈴レーダーが自動発動して感知するけどね。
「バスの車両。 一緒だったはず?」
「同じだよ、 三つ前の席だし。 出発まであと五分もないのに、どうしたんだろ…」
連絡を取ろうにも、美鈴はケータイ持ってないし。
「むー。 バス動く前。 鈴っちとお菓子交換する計画なのに」
美鈴の到着を催促するように、ニット帽の少女は足をバタつかせる。
椅子をガンガン蹴飛ばされ、一つ前の席にいた大柄な男子が不満げに振り返ってきたが、彼女の一睨みのもとに撃退された。
そうして、残り一分。
いよいよ本気で不安になり始めた頃。
「うがぁあああっ!! ま、間に合ったんだぜ!!」
前の方が何やら騒がしくなった。
どたん、どたんと地団太を踏むような音が響く。
誰かが暴れているようだった。
「…また奈央がなんかやらかしたのか…?」
健介がダウンしたから、憂さ晴らしをする相手がいなくなって、退屈なのだろうか。
そう思って立ち上がってみると、そこにいたのは―――
「セーフ!! オレってば超ギリチョンセーフ! やっぱ魔法少女ってのは、遅れて登場するのが王道なんだぜ!」
ピンク色のショートヘアの、可愛らしい小柄な少女だった。
最初のコメントを投稿しよう!