Chapter2

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車内が徐々にざわついてくる。 外にいた生徒たちが乗り込んできたのだ。 立ち上がってバスの中を見回すが、美鈴はまだ来ていないようだった。 「鈴っちは遅刻か? 小沢祐君」 身長が足りず、背伸びしても前も後ろも見えない見晴さんが、アーモンドのチョコをカリカリかじりながら訊ねてくる。 一つ貰おうと伸ばした手が、ピシャリと叩かれる。 「うん…。 あの髪は目立つから、いたら一発で分かるハズなんだけど」 それ以前に美鈴レーダーが自動発動して感知するけどね。 「バスの車両。 一緒だったはず?」 「同じだよ、 三つ前の席だし。 出発まであと五分もないのに、どうしたんだろ…」 連絡を取ろうにも、美鈴はケータイ持ってないし。 「むー。 バス動く前。 鈴っちとお菓子交換する計画なのに」 美鈴の到着を催促するように、ニット帽の少女は足をバタつかせる。 椅子をガンガン蹴飛ばされ、一つ前の席にいた大柄な男子が不満げに振り返ってきたが、彼女の一睨みのもとに撃退された。 そうして、残り一分。 いよいよ本気で不安になり始めた頃。 「うがぁあああっ!! ま、間に合ったんだぜ!!」 前の方が何やら騒がしくなった。 どたん、どたんと地団太を踏むような音が響く。 誰かが暴れているようだった。 「…また奈央がなんかやらかしたのか…?」 健介がダウンしたから、憂さ晴らしをする相手がいなくなって、退屈なのだろうか。 そう思って立ち上がってみると、そこにいたのは――― 「セーフ!! オレってば超ギリチョンセーフ! やっぱ魔法少女ってのは、遅れて登場するのが王道なんだぜ!」 ピンク色のショートヘアの、可愛らしい小柄な少女だった。
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