Chapter2

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「ところで戸山さん、なんでここに? というか何故に硝霞を取り押さえてるんですか?」 三年生の戸山さんは、当然受験勉強があるため不参加だったはず。 「ピンクちゃんはですね~…期末試験で赤点とっちまったもんだから、今日から補習受けなきゃなんないのですよ」 「そ、そうなの?」 硝霞に訊ねると、気まずそうに視線を逸らされた。 どうやら図星らしい。 …意外だ。 美鈴があんな感じだから、てっきり硝霞も勉強できると思ってたのに。 「でもピンクちゃんのことだから、どうせ補習サボってキャンプへ逃げる魂胆だろうと踏んで、網を張ってたわけなのですよ。 さあさあ、学校で楽しくお勉強しましょうピンクちゃん」 「いやだあああああ! キャンプなんつー真夏の一大イベントを前にして退けるか! オレとセンパイのひと夏のアバンチュールを」 「ではでは皆さん、良い旅を~」 ニッコリ微笑むと、戸山さんは自称魔法少女をずるずる引きずり、車内から退散していった。 硝霞の悲痛な叫びが、徐々に遠ざかっていく。 「……………」 生徒一同、揃って沈黙。 皆呆然と顔を見合わせるばかり。 好き放題暴れて瞬く間に去っていった、台風みたいな女の子だった。 …はあ。 どうして狩人ってのはこう、兎に角個性的な輩が多いんだろう。 普通のはいないのか、普通のは。 ドサッとシートに腰を下ろす。 ケータイで時刻を確認すると、既に集合時間を十分も過ぎていた。 「美鈴…どうしたんだろ」 もしや、ここに来る途中何かに遭ったんだろうか。 『影』とか、光喰らいとか。 嫌な想像に、もやもやした不安が募り出す。 そのときだった。  こつ こつ 「…ん?」 耳元で、窓を叩く音。 小石でも当たったんだろうか。 そう思って、僕は窓の外に目をやり――― 「………、ぇ…?」 窓ガラスの外側に、小さな手が張り付いていた。  
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