Chapter2

10/113
前へ
/232ページ
次へ
二本の小さな子どもの手。 真っ白な肌のそれは、こちらへ訴えかけるように、窓ガラスをかりかりと引っ掻く。 異様な光景に皮膚が粟立ち、息がつまる。 細い指が、窓の縁を掴んだ。 そして――― 「……へ?」 ひょこりと。 艶やかな金髪ツインテールの、無表情な女の子の顔が現れた。 彼女を想うあまり幻覚でも見たのかと、一瞬自分の視力と正気を疑った。 が、窓の外にいるのは紛れもなく美鈴であって。 「ちょ、なにやってんのさ…!?」 彼女の手を挟まないように注意しながら、とりあえず窓を開けてやる。 美鈴は身を乗り出すようにして、僕の膝の上に転がり込んできた。 「…美鈴さん? そこ、ドアじゃねーですよ?」 「………入口、通れなかった。 他のドア探したら、タスク見つけた。」 言って、乗車口の方を指差す。 ああ、そっか。 さっきまで硝霞が騒いでたから、通るに通れなかったのか。 …だからって、窓から侵入を試みるのはどうかと思うけど。 「おっす鈴っち。 ぎりぎりセーフだったな」 「はろぅ、めるりん。 ワタシ、持ってきたよ、お菓子いっぱい。」 見晴さんと挨拶を交わしつつ、すとん、と僕の膝の上に、然も当然のように腰を下ろす美鈴。 「ち、ちょっと、美鈴の席はもっと前……」 「めるりん、お菓子なにある?」 「大量大量。 今日のために買い込んだ。 ポッキー。 ミルクキャラメル。 チョコクッキー。 りんごグミ。 マシュマロ。 どうぶつビスケットは、がおちゃんのお気に入りだったり」 「むむ…ワタシ同じくらい。 ミルクプリン、抹茶プリン、かぼちゃプリン、いちごプリン、生クリームプリン……あと、とっときのレアチーズプリンも。」 僕の抗議の声などお構いなしに、バッグからお菓子の入ったビニール袋を取り出す美鈴と見晴さん。 あーだこーだと意見を述べながら、互いに見せびらかし始めてしまった。
/232ページ

最初のコメントを投稿しよう!

454人が本棚に入れています
本棚に追加