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「生徒は全員揃ってるんだけど…」
「けど?」
「ウチの車両のバスガイドさんが―――」
ガシャァン!
言い終わらないうちに、最前列の席の窓が、何の前触れもなく破裂した。
突然の破裂音に、近くにいた女子が驚いて叫び声を上げる。
粉々に砕け散ったガラスが宙を舞う中、黒い影が車内に入り込んできた。
「な…な……!?」
だん、と通路を踏みしめ着地。
現れたのは、スチュワーデスのような紺色の制服を着た、幼稚園くらいの女の子。
「待たせたな皆の衆。 慣れない衣装を着用するのに、思いの外手間取ってな。 許せ」
足元のガラス片には目もくれずに言い放つ少女。
どこかで見たような、というかここ一カ月、毎日顔を合わせてきたその人物は。
「…あ……チセナ。」
僕の肩によじ登ってきた美鈴が、マシュマロを口いっぱいに詰め込んだ状態で、曾祖母の名を呟く。
長い黒髪をポニーテールに纏めているが、間違いない。
とてつもなく似合わないコスチュームに身を包む、窓を蹴り破って登場した彼女は、紛れもなくあの血世茄だった。
「ひい、ふう、みい………うむ、皆揃っておるようだな、感心感心」
堂々と出席確認をするあたり、実に彼女らしい。
……って、そうじゃなくて。
「…なにやってんの、血世茄」
一週間前、水着を買うと張り切っていた時から、なんとなく予想はしていたが。
まさかこんな形、それも堂々と参戦してくるとは思わなかった。
幼い老婆は、うむ、と自信ありげに頷き、運転席側に設置されていたマイクを手に取る。
あーあー、とマイテス。
天井のスピーカーから、聞き慣れたぷりちーボイスが流れる。
『我は謎の美少女バスガイドさん・血世茄である。 年は167。 そこにいる美鈴の曾祖母だ。 好きな物はチョコレートと白玉あんみつとシナモンロール。 手元にある奴は今すぐよこせ。 今日から三日間、僅かだが貴様等と行動を共にする、よろしくな』
…なんつー自己紹介。
もはやどこから突っ込めばいいのか、僕にも分からない。
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