Chapter2

12/113
前へ
/232ページ
次へ
「生徒は全員揃ってるんだけど…」 「けど?」 「ウチの車両のバスガイドさんが―――」 ガシャァン! 言い終わらないうちに、最前列の席の窓が、何の前触れもなく破裂した。 突然の破裂音に、近くにいた女子が驚いて叫び声を上げる。 粉々に砕け散ったガラスが宙を舞う中、黒い影が車内に入り込んできた。 「な…な……!?」 だん、と通路を踏みしめ着地。 現れたのは、スチュワーデスのような紺色の制服を着た、幼稚園くらいの女の子。 「待たせたな皆の衆。 慣れない衣装を着用するのに、思いの外手間取ってな。 許せ」 足元のガラス片には目もくれずに言い放つ少女。 どこかで見たような、というかここ一カ月、毎日顔を合わせてきたその人物は。 「…あ……チセナ。」 僕の肩によじ登ってきた美鈴が、マシュマロを口いっぱいに詰め込んだ状態で、曾祖母の名を呟く。 長い黒髪をポニーテールに纏めているが、間違いない。 とてつもなく似合わないコスチュームに身を包む、窓を蹴り破って登場した彼女は、紛れもなくあの血世茄だった。 「ひい、ふう、みい………うむ、皆揃っておるようだな、感心感心」 堂々と出席確認をするあたり、実に彼女らしい。 ……って、そうじゃなくて。 「…なにやってんの、血世茄」 一週間前、水着を買うと張り切っていた時から、なんとなく予想はしていたが。 まさかこんな形、それも堂々と参戦してくるとは思わなかった。 幼い老婆は、うむ、と自信ありげに頷き、運転席側に設置されていたマイクを手に取る。 あーあー、とマイテス。 天井のスピーカーから、聞き慣れたぷりちーボイスが流れる。 『我は謎の美少女バスガイドさん・血世茄である。 年は167。 そこにいる美鈴の曾祖母だ。 好きな物はチョコレートと白玉あんみつとシナモンロール。 手元にある奴は今すぐよこせ。 今日から三日間、僅かだが貴様等と行動を共にする、よろしくな』 …なんつー自己紹介。 もはやどこから突っ込めばいいのか、僕にも分からない。
/232ページ

最初のコメントを投稿しよう!

454人が本棚に入れています
本棚に追加