454人が本棚に入れています
本棚に追加
/232ページ
「確かに見晴さんの作戦がなければ、私たちは負けていたわね。一回戦で、あの筋肉集団に」
「めるりん、頭いい、天才。」
「うむ。敵ながら、なかなかの策士であった」
それぞれが見晴さんに賛辞の言葉を送る。
戸惑った様子で、僕へ視線を向けてくる。
彼女の瞳を真っ直ぐに見つめ返しながら、僕は深く頷いた。
「みんなの言うとおりだよ、見晴さん。仲間の為にガンバってくれて、ありがとう」
心の底からの本心を伝える。
思ったことが直ぐ口に出てしまう正直者な僕だが、こういうときは本当に便利だ。
「仲、間…」
何かを噛み締めるように。
見晴さんはゆっくりと呟く。
いつも無愛想なその横顔には、驚きと嬉しさが混ざり合ったような、はっきりと幸せそうな表情が浮かんでいた。
『はいはい、お集まりのメイド少年少女たち。集合写真を撮りますからそこに並んで下さい。先生は待ちきれませんさあ早く』
スピーカーから響く声。
何時の間に戻ってきたのやら、紫嵐先生がマイクを片手に、脚立に乗せたカメラをいじっていた。
「写真?」
そう言えば、しおりに書いてあったっけ。
ビーチバレーの後、参加者全員で集合写真を――――って、このカッコで!?
「ちょ、ちょっと待っ…」
しかし、そんな僕の声は、皆の歓声にかき消された。
カメラの方へ雪崩れ込んでいく生徒たち。
筋肉も、バレー部も、僕を撮影していた女子も、放心状態の健介を引きずった奈央も、一様に駆け寄っていく。
「な、なんで乗り気なの、みんな!?」
男子も女子も、皆嬉しそうに、或いは恥ずかしそうに渋々と走っていく。
「おっ、写真か。行こうぜ!」
見晴さんの手を引き、駆け出す水仙。
面倒くさそうに頭を振りながら、綾瀬さんもそのあとに続く。
「む、我らも向かうぞ美鈴」
「ん。タスク。」
ぐいっとスカートの裾を引かれる。
じ、冗談じゃない、断固として拒否してやる…!
そう決意しようとしたのだが、美鈴が『撮らないの?』とでも問うように、じっと僕を見上げてくるのだ。
「………ああもう!」
どうやら覚悟を決めるしかないらしい。
「こうなりゃ自棄だ! 一枚も二枚も変わんないし!」
僕は美鈴に手を引かれ、皆の所へ向かうべく、夏の砂浜を走った。
最初のコメントを投稿しよう!