Chapter2

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「確かに見晴さんの作戦がなければ、私たちは負けていたわね。一回戦で、あの筋肉集団に」 「めるりん、頭いい、天才。」 「うむ。敵ながら、なかなかの策士であった」 それぞれが見晴さんに賛辞の言葉を送る。 戸惑った様子で、僕へ視線を向けてくる。 彼女の瞳を真っ直ぐに見つめ返しながら、僕は深く頷いた。 「みんなの言うとおりだよ、見晴さん。仲間の為にガンバってくれて、ありがとう」 心の底からの本心を伝える。 思ったことが直ぐ口に出てしまう正直者な僕だが、こういうときは本当に便利だ。 「仲、間…」 何かを噛み締めるように。 見晴さんはゆっくりと呟く。 いつも無愛想なその横顔には、驚きと嬉しさが混ざり合ったような、はっきりと幸せそうな表情が浮かんでいた。 『はいはい、お集まりのメイド少年少女たち。集合写真を撮りますからそこに並んで下さい。先生は待ちきれませんさあ早く』 スピーカーから響く声。 何時の間に戻ってきたのやら、紫嵐先生がマイクを片手に、脚立に乗せたカメラをいじっていた。 「写真?」 そう言えば、しおりに書いてあったっけ。 ビーチバレーの後、参加者全員で集合写真を――――って、このカッコで!? 「ちょ、ちょっと待っ…」 しかし、そんな僕の声は、皆の歓声にかき消された。 カメラの方へ雪崩れ込んでいく生徒たち。 筋肉も、バレー部も、僕を撮影していた女子も、放心状態の健介を引きずった奈央も、一様に駆け寄っていく。 「な、なんで乗り気なの、みんな!?」 男子も女子も、皆嬉しそうに、或いは恥ずかしそうに渋々と走っていく。 「おっ、写真か。行こうぜ!」 見晴さんの手を引き、駆け出す水仙。 面倒くさそうに頭を振りながら、綾瀬さんもそのあとに続く。 「む、我らも向かうぞ美鈴」 「ん。タスク。」 ぐいっとスカートの裾を引かれる。 じ、冗談じゃない、断固として拒否してやる…! そう決意しようとしたのだが、美鈴が『撮らないの?』とでも問うように、じっと僕を見上げてくるのだ。 「………ああもう!」 どうやら覚悟を決めるしかないらしい。 「こうなりゃ自棄だ! 一枚も二枚も変わんないし!」 僕は美鈴に手を引かれ、皆の所へ向かうべく、夏の砂浜を走った。
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