Chapter2

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目の前に広がる光景。 笑顔と温もりに満ちた“日常”。 確かに此処にある幸せを噛み締め――――しかし、と現実に引き戻される。 膨らんでいた風船が、ぱちん、と弾けてしまったような感覚。 そう。 こんな幸せな日常は、きっと長く続かない。 だって………私は、バケモノだから。 みんなとは違う。 欲望を抑えきれず、抗えども抗えども、最後には堪えることができなくなる。 食欲にも似た衝動に突き動かされ、本能の赴くままにヒトを、光を求め、他者を喰らう。 この前だってそうだ。 公園にたむろしていた、十人ほどの他校の生徒を襲ってしまった。 そんなことを回想していると、不意に、ある欲求が湧き上がってきた。 私の手を引く、彼。 メガネをかけた、線の細い顔立ちの少年。 そんな大好きな彼を食べてみたら、一体どんな味がするのだろう。 きっと、最高に美味なんだろうな。 …食べて、みたい。 だけど、そんなことはできない。 ――――ああ。 こんな私を、皆が知ったら。 私が人殺しだと。 人間に害を及ぼし、ヒトを喰らう“獣”だと知ったら。 彼やクラスメートは。 鈴っちは、どう思うだろうか。 それでも、こんな私を、皆は友達と呼んでくれるのだろうか…? 不安と罪悪感に苛まれながら、私はそっと空を仰いだ。 ◆【interlude out】◆  
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