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「離せコラ!! ジブンで歩けるっつってんだろォが! 何時までもその汚ェ手で触れてんじゃねェよ!」
「そうか。 それは何よりだ」
覆面の男―――叉戌真(さいま)は、青年の身体を腕力のみで持ち上げると、そのままゴミでも放り棄てるように、コンテナへ向けて投げつけた。
ゴン、という鈍い音。
鉄の箱に頭から激突した青年は、そのまま地面に倒れ込み、動かなくなる。
無論、気を失っただけである。
目の前の青年がこの程度では決して死ぬことがないのは、この場に居る誰もが理解していた。
「よくぞ戻ったな、叉戌真。 相変わらず、アレは随分な荒れようだが……何だ? まさか貴様ともあろう男がしくじったか?」
「結論から申せば。 この不甲斐なき身をお許し下さい」
「いやいや、貴様の失態を責めるつもりなど毛頭無い。 何があったのか。その事実を問うておるだけだ。 聴かせて貰えるな?」
「はっ…」
男の言葉に、叉戌真は深く頭を垂れると、静かに淡々と、ただ事実のみを語り始めた。
『鈴』の狩人討伐の失敗。
『鋼鎖』『硝子』との交戦。両者の生存。
そして今、そこで気を失っている光喰らいの青年、巳零を追い詰めた『人間』の存在などを、簡潔に。
「ふむ…。 やはり、徐々に十並市内に狩人が集結しつつある、か。 聾申たちのこともある。 当然と言えば当然だが」
叉戌真の話を聴き終えた男は、顎に手を当て、思案するように呟いた。
隣に居る琶酉と、コンテナに腰掛ける亥断も、各々に意見を述べる。
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