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「初耳じゃのう。『硝子』などという狩人が居ったのか。 それも、お前さんと同等の力量を持つ、とな?」
「いや、叉戌真は“五回”削られたんすよ? “一人の叉戌真の戦い方”じゃあ、圧倒的に向こうが上だ。 そうだろ、叉戌真?」
「……認めるのは癪に障るがな。 そして『鈴』と『鋼鎖』にしても、一度ずつ持っていかれてる」
「カカカカ…! なんじゃ、強ち敵も雑魚ばかりじゃあないようだのう」
「それに巳零を倒したっていう男も気になるぜ。 本当に人間なのかよ、ソイツ?」
現時点の光喰らいの中で最弱とは言え、彼とてれっきとした光喰らいだ。
ただの人間にしろ『影』にしろ、後れを取るとは思えない。
怪訝そうに首を傾げる琶酉。
そんな彼の発言に反応したのは、
「っ……、ありゃァ、バケモンだよ…。 殺せねェ範疇じゃねェけどな」
意識を取り戻した巳零だった。
全身を襲う激痛に顔をしかめながらも、壁に手を突き立ち上がる。
誰が見ようとも瀕死の状態なのは明らかだったが、それを追求する者はいなかった。
問うたところで、彼が素直に従わないことなど、同朋たる彼等は皆熟知している。
痣と出血で酷い有り様の顔を手のひらで押さえながら、巳零は苛立たしげに舌打ちする。
「出鱈目な速さで動くは、ヘンなナイフ創り出すは、試しに肩から先をぶった斬ってやったら、ソッコーで再生しやがった」
最早人間と呼べる領域ではない、と。
憎悪の入り混じった彼の瞳がそう語っていた。
「フン…だが巳零よ? 万全の状態で闘えば、その少年とやらは大した弊害にはならぬのであろう?」
男の質問に、巳零は当然だとでも言うように頷く。
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