771人が本棚に入れています
本棚に追加
そう言えば、歩美ちゃんをさらった後についてはノープランだったな。
俺ってば、ウエディングドレスのままどこに行くつもりだったのだろう。
家にお茶菓子が無かったなとか、麦茶の水入れたっけとか、いかがわしい本を隠したかなとか……そんな事を考えているうちに、俺の城に到着してしまった。
車を停め、素早く辺りを見回す。
誰もいないのを確認し、これまた素早く部屋の鍵を開けた。
そしてさっさと新婦を部屋に押し込め、もう一度辺りを見回した。
大丈夫だ。誰もいない。
扉を閉めると、新婦が部屋の真ん中に凛と立っている。
何だこの見慣れない光景は。
「ここが……あなたの家?」
珍しそうにキョロキョロと見回している。
ごく一般的な6畳一間。
風呂とトイレは別だし、収納力抜群な押し入れがある。その分、一般よりやや上かもしれない。
「あ、はい。そう……ですが」
オンボロアパートにウエディングドレス。まさかのコラボレーション。
ボリュームのあるスカートで、部屋が埋もれてしまいそうだ。
「凄い……。話には聞いたことはあったけど、本当にこのような家に住む人がいるんですね!」
彼女は目をキラキラと輝かせ、満面の笑みを俺に向けた。
最初のコメントを投稿しよう!