771人が本棚に入れています
本棚に追加
もちろん、クスノキグループだって知っている。
就職活動の一発目で華麗に落ちた企業だしな。
「ねぇ、結婚って何?お互いに好きで、必要だと思うからするものでしょ?
あの人が私なんかと結婚するわけぐらい、私でもわかるのよ。
私、恋がしたいの。自分で選んだ道を歩きたいの。
自由って何かを……感じたい」
俺は全然別なことを考えていたわけだが、彼女はお構い無しに気持ちをぶちまけた。
エキサイトしているのだろう。敬語が消えている。
しかし、そんな事より俺の立場が危ういという事実に気付いてしまった。
いいとこのお嬢様。最上級の箱入りで、超ド級に過保護なお父様だと予測される。
そんな娘を、俺はさらってしまった。
「ま、ままままままままずくね?俺、誘拐犯になってんじゃ!?」
カスミの気持ちよりも、自分の身の安全が重要だ。
見事なまでの焦りっぷりに、カスミもキョトンとしている。
そして、人差し指を顎にあて、少し考える素振りを見せた。
「……ありえるかも」
「どっ!どどどどどうしよ!嘘だろ?」
まぁ、彼女が冗談を言うタイプには見えないし。
何より、その『お父様』と家柄を考えれば答えは見えてしまう。
最初のコメントを投稿しよう!