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どんな事を話すのかわかっていても、興味津々でいるのもカッコ悪い。
「もしもし?お父様?」
とうとう繋がった電話に、俺が緊張しはじめている。
『カースーミー!!何処に居るんだ!あれは誰だ!?どうなっているんだあああぁぁぁぁぁぁ!』
錯乱中であろう、オヤジボイスが漏れている。漏れていると言うか、ハンズフリーかと思うほどハッキリ聞こえた。
カスミは携帯電話を耳から離し、渋い顔をしている。
その間も、カスミの父親はなんやかんやと叫んでいた。
「お父様?落ち着いて。おとなしく話を聞いてくれないのなら、私は二度と戻らないわよ?」
静かに強く言うと、ハンズフリー状態がピタリと止んだ。
「お父様。約束覚えてる?卒業したら、家を出してくれる約束」
おそらく、父親の言葉を聞いているのだろう。
カスミの美しい顔が、怒りの表情へと変わっていく。
「ちょっと!それは屁理屈って言うものよ?お父様、自分で『言い訳や屁理屈はダメ』と言っていたじゃない!」
箱入りお嬢様も、怒鳴るんだなって思ったよ。それに、綺麗な人も怒ると怖い事がわかった。
どんな話になっているのか聞こえないから気になる。
俺は紙とペンを引っ張り出し、『どうなってんの?』と書いてカスミに差し出した。
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