ちょっと待った!

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初めての教会。 何度か見てはいるが、中に足を踏み入れるなんざしたことはない。 俺はクリスチャンでもないし、教会なんて俺の人生では無縁のものだと思っている。 それに例外があるとしたら、愛する歩美(あゆみ)ちゃんとの挙式をする時だけだ。 そんな俺が、教会を目前に暴れ馬になりきっている心臓を両手で押さえつけている。 まわりから見たら、立派なクリスチャンかもしれない。 目を閉じると、歩美ちゃんの悲しげな笑顔が蘇る。 歩美ちゃんは、一生一緒に居ようと約束した彼女。 だけど彼女は、『別れなければならない』と俺の前で号泣したんだ。 「ごめんね……。源ちゃん。私……私……」 その続きは嗚咽しかなく、俺は歩美ちゃんの前で正座を保つしかできなかった。 そんな俺を見る彼女の瞳は『どこかにさらって』と訴えているように見える。 いや。訴えていたんだ。 歩美ちゃんはいつも『源ちゃんは、歩美のことを一番にわかってるよね』と笑っていた。 だからあの瞬間感じた歩美ちゃんのSOSは、間違いないものなのだ。 さぁ、さらってやるぜ! だがその前に、こういう状況になった経緯でも回想しておこうか。
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