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それから一ヶ月。
俺の魂は、大気圏に届く勢いで抜けきっていた。
「なぁ、歩美の事だけど……。来週らしいぞ。だからさ、源太もそろそろ次に進んだ方がいいぞ?」
俺の姿があまりにも痛々しいのか、学(まなぶ)が言いづらそうに教えてくれた。
学は俺の心の友だ。
歩美ちゃんとのデートのレクチャーや、細々した悩みは全て聞いてもらっていた。
「そ、そうなんだ!」
無理矢理に作った笑顔は、さぞかし気持ち悪かっただろう。
俺は学には『別れた』としか言っていない。
何でも相談していたが、こればかりは俺と歩美ちゃん、二人だけの問題ではない。
言っていい事と悪い事ぐらい、何となくだがわかっているつもりだ。
「まぁ、源太にはもっといいコが見付かるはずだって!」
「だよな!俺ほどの男、世の中の女子はほっとかないからな!」
テンションを無理に上げ、学を安心させる。
酒が入っている学はとてもお喋りで、歩美ちゃん情報をペラペラと教えてくれた。
それに興味のないフリをするのはやっとだったけれど、大袈裟に食い付いたら教えてもらえない気がしたんだ。
学が意地悪なわけではない。
俺の為を思って……というのはわかっているから、俺は歩美ちゃんは忘れたフリをしようと思うのだ。
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