ちょっと待った!

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学が男にしてはお喋りだという事は、長い付き合いでわかっている。 元々、学の女友達の友達の友達……だったかな。 そこからの紹介で歩美ちゃんと出会った。 その方面から流れてきた情報らしく、信用はできる。 式の日にちも、場所までバッチリ仕入れる事に成功した。 それから俺は、寝ても覚めても脳内シュミレーションを欠かさなかった。 もちろん、今日この日に、歩美ちゃんを救い出す為に。 ゆっくりと目を開け、教会の十字架を睨む。 日本人なら、神前挙式だ! そして意を決し、勢いよく扉を開いた。 扉が開く音に、参列者が一斉に振り返る。 これぐらいは想定内だ。 「ちょ、ちょっと待ったああぁぁぁぁぁ!!」 25年の人生の中で、一番いい声が出た気がする。 ポカンとする歩美ちゃんと、新郎の男。そして神父様。 「来い!!」 歩美ちゃんに向け、人生で二番目にいい声を出す。 彼女は少し戸惑った素振りを見せたが、俺のもとへかけてくる。 ベールに隠れて表情は見えないが、きっと満面の笑みだろう。 俺が伸ばした手に、歩美ちゃんの手が重なる。 してやったりだ!大成功!
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