771人が本棚に入れています
本棚に追加
次は、速やかにこの場を去る!
そう思ったのだが、違和感に襲われた。
歩美ちゃんはポッチャリ系で、俺よりかなり背が低かった。
ヒールを履いていても、余裕で俺の方が背が高かったはず。
俺の手を握るこのウェディングドレス姿の歩美ちゃんは、スラッと背が高く、モデルのようにウエストがくびれている。
「早く!」
ベールを上げ、俺に一喝するその顔は……。
「だ、誰?」
凛とした、とびきりの美人。歩美ちゃん、こんなに化粧栄えしたっけ?
「もう!早く!」
うろたえる俺を引っ張るように、歩美ちゃん?は走り出す。
「どこに行けばいいの!?」
あれ?この人はやっぱり歩美ちゃんなのかな。
逃げる気満々だし。
「あ、あの目の前の車!」
短期間で女は変わると言うし、今のこの状況でこの新婦が歩美ちゃんじゃないと思う方がおかしいよな。
混乱する頭のまま、急いで車に乗り込む。
俺のシュミレーションでは、大勢が追い掛けてくるはずだったのだが、入り口で立ち尽くす新郎と参列者が見えていた。
これなら余裕。
「カスミさん!」
運転席のドアを閉める瞬間、そう聞こえた気がする。
だがそれを確かめる場合でもない。
急いで発進させた車は、耳障りな音を立てて走り出した。
最初のコメントを投稿しよう!