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淵「ん?なんだ、惇兄。そいつ…死んでるのか?」
淵が倒れている青年に気付いた。
惇「…いや、息はある。気を失っているようだ。」
言いながら惇は馬の背に乗せた荷物を整え
青年が纏っている布の上から腰巻きに左手を引っかけると、
軽々と青年を持ち上げる。
その行動を淵は口をあんぐりと開け、
驚いた表情で惇の動きを目で追い
淵「ま、まさか…」
惇「うむ、連れて行く。」
惇は馬の背中に青年を乗せ、横目で淵をみた。
淵「いい加減にしてくれよ!今から戦だってのに、そんな病弱そうな餓鬼を連れて行ってどうするつもりだ!
まったく…だいたい惇兄はいつもいつも勝手に決めちまって、
俺の意見なんてちっとも聞こうとしねぇ!…この間だってそうだ!ァィッ…」
淵の小言を
惇『また始まったか』
と聞き流しながら
ヒョイと馬に跨がり
淵の方を振り向きもせず馬の足を進め
徐々に駈け足になって先を急いだ
淵「…だからいつも俺が苦労…って惇兄?!!
ちょ、待ってくれよぉ!!」
気付くと目の前に惇の姿はなく、
すでに先の方まで進んでいるのを見つけ、慌てて馬を走らせる。
後ろの武士達も
やれやれといった表情で後を追う。
どうやら、この光景もいつもの事のようだ。
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