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惇「さて…俺達も作戦に移るぞ。」
辺りは一気に静まりかえり、
真っ赤な夕日は、階段を降りるようにゆっくりと沈んでいく。
惇達は二手に分かれ息を潜めた。
村を入って左手の民家の屋根上で
淵と3人の部下が
伏せて身を隠し
中央広場に向かって、弓矢の標準を合わせていた。
村を入って右手の馬小屋には
惇と4人の部下が扉の隙間から外の様子を窺(ウカガ)っていた。
こちらの部下の手には大きな剣や長い槍がある。
青年を乗せたままの馬は
他の馬と並び、牧草を食べていた。
惇はゆっくりと青年に目を向ける。
惇「いつまで寝たふりをするつもりだ?」
急に声をかけられた青年は
一瞬驚いたが、
馬からピョンと飛び降りて
余裕のような表情を作った。
青年「気付いてたのか。争いが始まったら、騒動に紛れて抜け出そうと思ってたけど…その必要はなくなったようだ。」
青年は扉の方へ足を進めたが、惇が「待て」
と呼び止めた。
惇「お主も戦ってはくれぬか?」
その一言に驚いた表情で惇を見たかと思うと、次第にその表情は怒りに変わり
はや歩きで惇に近付きながら
青年「今、何て?!何故俺が持った事もない武器を使って戦わないといけないんだ!!」
青年は惇の目の前に立ちはだかると、言葉を続けた。
青年「勝手に巻き込みやがって!俺にはこの村の為に命の危険をさらす理由はない!!」
惇「…………。」
惇はピクッと何かの音に反応し
扉に目をやると扉の隙間から顔を覗かせた。
惇や淵には聞こえたようだ。
何十もの馬が駈ける激しい音が近付いてくる音が…。
惇「安心しろ。その理由がお出ましだ。」
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