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ついに、崩壊が始まったのだ。海江田は、そう思った。ジャックの言った通りだった。
海江田は、後片付けを止めた。やっても意味がない。どうせ、ここは1、2時間後には海の底だ。海江田はそう思うと、外に出た。
この日の東京は、冬らしい気候だった。からりとした晴れで、東京湾からの冷たい北風がビュウビュウと吹き荒れている。空は雲ひとつない快晴だった。
海江田は、残りの時間をどう使うのかを考えていた。そして、ただぶらぶらしているのもいいな――と思った。最後に、東京の様子を眺めているのも悪くはない。
その時、海江田の目の前にある人物が現れた。――4年前に別れた、海江田の元妻の加南子(カナコ)であった。海江田が呆然と彼女を見つめていると、彼女が泣きながら抱きついてきた。
「生きてたのね、よかった……」
加南子はそう大声で泣きながらそう言った。
「加南子……。なぜ、君がここに……。山梨の実家に、帰っていたんじゃないのか?」
「ええ。今までは山梨にいたわ。でも、やっぱりあなたが気になって……」
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