第4章 新しい時代

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長瀬が去った直後に、廣瀬がやってきた。彼女も、この船に乗る数少ない人間のひとりである。 「ついに、明日ですね……」 廣瀬は、《あかつき》を見上げながら、そう言った。そう。我々人類のタイムリミットは、あと24時間――いや、24時間もないかもしれないのだ。 ……科学は、実に無力だ、と湯島は思った。いくら今後起きる現象が分かっているとしても、止める術は何一つないのである。こうして船を作り、金がある一部の人間と動物しか助けることはできないのだ。 湯島は、廣瀬の呟きには答えずに、ただ《あかつき》の船体を見上げた……。 東京 午後8時 東京に、火山灰がまるで雪のように降り注いでいる。今日噴火した富士の火山灰が、東京にまで到達したのである。 今、日本中の火山という火山が、噴火を起こしていた。大量に吹き上げられた火山灰が上空を覆っている。
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