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好き………
こんな風に暖かく包まれる事なんて知らない。
こんな感情が自分に向けられた事なんて、今まで一度も無かった。
だから……怖い。
知ることさえ無かったら、失う事に怯える事も無かったのに……知ってしまえば、この温もりを失う事を恐れる自分が現れる。
でも、もし………
真次が、自分の気持を伝え終えたかのように長く口付けていた唇を離す。
見つめあう、二つの瞳。
「……俺の事……」
「裏切らない」
綾に全てを言わせず、真次が断言する。
「もう放さないし、ずっと綾の側にいる」
再び、真次は綾を抱き締めた。
信じてみてもいいのかも知れない……。
自分を包みこむ腕から伝わってくる何よりも確な心。
きっと、この目の前の男は決して自分を裏切らない。
綾の腕が真次の背中にまわる。今度は自分の心を真次に伝えるかのように……。
ここにいる。
俺を知り、理解し、それでも尚、許し守ってくれる人が……。
そして何時か、俺自身が、その気持に応え強くなりたい。
だからもう少しだけ、この温もりに甘えてみようかと思う。
飛びたつ、その日まで……
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