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言葉が詰まる。 止まりかけていた涙は再び溢れだし、頬を濡らしていた。 吹き出した感情が口から出たのかどうかさえ解らなくなるほどに綾は混乱していた。 そして、再び自分の体を包みこむ暖かな感触。 真次は何も言わず、ただ涙にくれる綾を再び抱き締めていた。 綾のやわらかな髪を優しく撫でる。 ただ、触れ合っているだけなのに伝わる感情……。 『それでもいい』 『甘えてくれていい』 『それで綾が少しでも癒されるなら、感情をぶつけてくれて構わない』 怖かったのは、この感触。 この心地好さを体が覚えてしまうこと……。 いつまでも触れていたい。 ずっと抱き締めていて欲しい。 闇に落ちないよう、名前を呼んで、側にいて欲しい。
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