87人が本棚に入れています
本棚に追加
/61ページ
でも、そんな心配は無用だったらしい。
「あんたに心配されるようじゃ、エナもまだまだね」
放課後、トムを迎えにきたエナちゃんに、思い切って聞いてみた返事がこれだ。
「くだらない嫉妬を相手にするなんて、バカな真似はしないもの」
ズバッと言う姿は、一本筋が通っていてかっこいい。
「もっと実のある話をしなさいよねっ」
「はーい」
エナちゃんに連れられ、私たちはスタジオにやってきた。ステーションモールの中にある、小さな貸しスタジオだ。
「ちょっと予約してくるから」
エナちゃんはひらひら手を振り、1人で入って行く。
「……ついて行かなくていいのかな?」
こくり。トムは私が言い終わらないうちに頷いた。
10分くらいして、エナちゃんが戻ってくる。
「割引券しかくれないなんて、シケたスタジオね。無料にしなさいよ無料に」
ぶつぶつ文句を言いながら、「行くよ」と私たちを先導する。エナちゃんは、以前にバンドを組んだことがあるのかな? 何をするのかわかっているみたいだった。
最初のコメントを投稿しよう!