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新緑が瑞々しい、初夏の朝。私は制服に身を包み、学校へ向かう。セミの鳴き声は、暑いよーと騒いでいるように聞こえる。
――お、偶然。
前に見えるは、幼なじみのトム。私は足を早め、トムの背中にアタックした。
「おはよう!」
太陽に負けない笑顔で、あいさつをする。トムは少し咳き込んだあと、コクリと頷いた。
「今日も暑いねえ」
こくり。
「プールに飛び込みたいねっ!」
こくり。
「もー相変わらず無口だねえ! 私、アフレコしたくなるわ」
バシバシ、トムの背中を叩く。
「イケメンボイスには自信があるぜ」
トムは私の腕を掴み、背中からどけた。どうやら叩きすぎたみたい。
「おお、ごめん。痛かったね」
こくり。
トムの考えていることは、すぐにわかる。もう長い付き合いだからかな。その内トムの通訳係になりそうで怖いわ。
「あ、トム、見てこれ!」
学校への通り道にあるコンビニのガラスに貼られたポスターを指差す。
「市の音楽祭だって」
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