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トムは眉間にシワを寄せ、難しい表情になる。
「……見せる?」
「1週間後の今日、スタジオ予約したから。ぷこも歌、覚えんのよ」
「おお、頑張る」
「頑張るんじゃなくて、覚えんの。頑張るだけじゃ意味ないから」
エナちゃんはもう1冊の楽譜をトムに持たせる。
「ショウくんありがとう!」
「……え?」
戸惑うトムに、エナちゃんは飛びっきりの笑顔になる。
「エナ、お金ないから」
――絶対うそだ。
そう思いながらも、エナちゃんの笑顔を見るとお財布を出したくなる。
「自分のは自分で」
「よし、おじちゃんが買ったる!」
エナちゃんに返そうとする楽譜を、私が奪う。
「しゃしゃり出てくんなよ」
呆れた様子だったが、買った楽譜を渡すと、小さな声でお礼を言ってくれた。
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