track 3

5/6
87人が本棚に入れています
本棚に追加
/61ページ
 トムは眉間にシワを寄せ、難しい表情になる。 「……見せる?」 「1週間後の今日、スタジオ予約したから。ぷこも歌、覚えんのよ」 「おお、頑張る」 「頑張るんじゃなくて、覚えんの。頑張るだけじゃ意味ないから」  エナちゃんはもう1冊の楽譜をトムに持たせる。 「ショウくんありがとう!」 「……え?」  戸惑うトムに、エナちゃんは飛びっきりの笑顔になる。 「エナ、お金ないから」 ――絶対うそだ。  そう思いながらも、エナちゃんの笑顔を見るとお財布を出したくなる。 「自分のは自分で」 「よし、おじちゃんが買ったる!」  エナちゃんに返そうとする楽譜を、私が奪う。 「しゃしゃり出てくんなよ」  呆れた様子だったが、買った楽譜を渡すと、小さな声でお礼を言ってくれた。
/61ページ

最初のコメントを投稿しよう!