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電車で帰るエナちゃんと別れ、学校に家が近い私とトムは徒歩で帰る。
「エナちゃん、パワフルだよね」
いつの間にかエナちゃんのペースに巻き込まれているね、トムに言うと、うんと頷く。
「トムもエナちゃんには心開いているみたいで、なんだか新鮮だったよ」
ははは、とトムの背中をたたく。トムはなぜか不機嫌になった。
「開いてない」
「あんなにしゃべるトム、久しぶりに見たって! 照れるな」
豪快に笑うと、トムは頭をガシガシ掻き、ため息をつく。気に入らないことがあるとやる仕草だ。トムはいつになっても、変わらない。
私は早とちりの月を見上げ、うーんと伸びをする。
「久しぶりに、楽しくなりそう」
呟いた私の言葉に、トムが小さく同意した。
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