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――相変わらず、上手だなあ。
トムのギターを聞いて、懐かしい気持ちになる。トムのギターを聞くのは、いつぶりだろう。高校に入った頃ぶりだっけ?
「……すっごい」
ぱちぱちと、エナちゃんが拍手をする。目をまんまるにして、びっくりしている。
「トム、またうまくなったね」
誉めると、嬉しそうに目を細めた。
「これ、いけるわ。1番とって、豪華景品ゲットも間近!」
握りこぶしを宙に向け、エナちゃんは高笑いをする。
「……練習、必要だけど」
トムはエナちゃんを見て、ぼそりと呟いた。
「もーショウくんったらイジワル」
機嫌がいいのか、エナちゃんはつんとトムをつつく。そして私を見て、「ちょっと合わせてみよう」と言った。
「合わせるって、演奏に合わせて歌うってこと?」
「それ以外に何があるのよ。エナは聞いてるから、さ、やって」
パンパンと手を叩く。私はトムを見た。トムも私を見て、こくりと頷く。
――トムのギターに合わせて歌うのは、中学生ぶり?
音が響く。私は目をつむった。
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