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「頭大丈夫?」
エナちゃんをちらりと見て、私に耳打ちするトム。
「聞こえてるよ、ショウくん」
頬の横で両手を組み、膝を少し落とす、いわゆるぶりっこのようなポーズをするエナちゃん。トムの体がビクッと震えた。まさか聞かれたとは思っておらず、びっくりしたのだろう。
「エナはね、メダルが欲しいの」
「メダル?」
目を輝かせるエナちゃんに聞く。エナちゃんはメダルより、副賞に興味があるのかと思った。市の音楽祭の副賞を知らないけれど。
「キラキラなメダルは、キラキラなエナにぴったりだもの!」
「ぷこ、」
トムが私の後ろに隠れる。メラメラと目に炎を宿したエナちゃんが怖いらしい。私が何か言ってくれると期待しているトムの瞳。
うーん、と腕を組み、私は口を開いた。
「やるか!」
「よしきた!」
「ぷ……」
ガクッと肩を落とすトムが、目に浮かぶ。振り向けば、思った通りの落胆した顔をしていた。
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