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曲を決め、練習を始めて半月が経った。毎日毎日練習をして、週に1回みんなで合わせる。スタジオを毎回借りるのはお金がかかるから、放課後の教室やぷこの家で練習した。
「見つからない」
放課後、中庭にある大きな木に寄りかかり、ため息をつく。夏が近いから、4時でも辺りは明るい。
――困ったな。
目をつむり、さわさわ揺れる木の葉の音に耳を傾ける。
「ドラムかー」
ショウくんとぷことのバンドなら、絶対1番になれるのに。ドラムがいないと音が物足りない。
「エナのためなら何でもやるとか言いながら、なんでドラムが出来ないのよ!」
言い寄る男共を片っ端から誘った。お願いがあるんだけど、そう言えばみんな「何でも言って」と笑うくせに。
「腑抜けどもめ」
ぶちっ、と芝を抜く。青々とした輝きもすぐに失われるだろう。はあっともう一度ため息をつく。エナの力はこんなものか? 自分を奮い立たせようとするけれど、もう疲れた。
「ドラム探しているの?」
突然、頭の上から声がした。
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