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鳴り響くチャイムの音を聞きながら、息を整える。
「あんたのせいで遅刻したじゃない」
「ごめん」
あの瞬間に止まっていれば、エナちゃんとぶつかることは無かった。ぶつからなければ、遅刻することも無かっただろう。
「じゃ、私保健室行くから」
トムに片手をあげ、別れを告げる。トムはわかったと頷いた。さて、とエナちゃんを振り返る。
「何よ」
「さ、行くよ」
エナちゃんのカバンを奪い取り、保健室へと歩き出す。
「泥棒! カバン返しなさいよ!」
持っているカバンをぐいぐいと引っ張るエナちゃん。
「無理しないの。痛いんでしょ、手」
ぶつかったときに、手のひらを擦っていた。カバンを持つことも、少しつらかったに違いない。
「デブのくせに」
「私のチャームポイントだからね!」
はっはっはと豪快に笑うと、エナちゃんはぶうたれた表情になる。
「あんたのせいだからね」
「わかっているとも! 責任を持って消毒するよ」
「あんたに触られたくないわ! デブが移る!」
「エナちゃん細いから、移ったくらいがちょうどいいんじゃない?」
「……ふんっ」
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