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死んでいないのなら生きているということになるか?
嫌だ。
俺は生も死も要らない。
ただ、目があればいい。
前が見えるように。
―どこでもない国、その中の中心に位置する都市。豊富な水源を誇示するように大きな噴水を囲み、鮮やかな樹木と永久の象徴である空の下、人々は談笑する。
また夜になれば、ガラス張りの会場に明かりが灯る。華やかなレースとリボンに包まれた娘たちが将来の相手を探しに来ると、彼女たちと踊るために一輪の薔薇を胸に挿した青年たちの心臓が脈打つ。
しかし、そんなことはどうでもいい。問題なのはそこに何があるのかだ。
そう、何もない。
意味など言うまでもなく、ましてや価値など有り得ない。
そんな日々を送る青年がいた。
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