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貴方はとってもズルイ人 私に愛の言葉を囁いて 谷底に佇んでいた私を救い出しておいて そんな言葉を云うのね 「愛してるよ実夏」 「晶さん…それは本当?」 「当たり前だろう?」 貴方はとってもずるい人 私に愛の言葉を囁くくせに そこには感情ひとつくれないのね 「人質?」 「ああいいだろう?」 「私が…ですか?」 「他に誰が居る」 優しかった貴方 どこまでも甘かった貴方 貴方のその 見せ掛けの愛に 救われてしまったのは 私だから 「それが…晶さんの願い?」 「そうだ。行くよな」 「それが貴方の望みなら」 「……っ」 優しいわね 貴方はやっぱり 最後まで貴方は私に甘い その冷徹な表情に 一瞬だけ見える感情を 愛してしまったのは 私だから 「晶さん…?」 「なんだ」 「ありがとうございます」 「…礼をいわれることはしていない」 「いいえ。貴方は見せ掛けでも偽りでも 私に愛をくれたから」 「…………っ」 「愛していますよ晶さん」 「……実夏っ」 ああ 本当に貴方は優しいのね 最期の最期まで ただただやさしくあるのね 貴方の愛に救われたのは私 私の愛に死ぬのも私 「偽りなんかじゃ…っ」 愛に救われ 愛に死ぬ      
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