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「いいえ…。沖田さんは優しいなぁって。」 「私が…?」 「えぇ。素性の知れない私に名前をくれて、心配してくれて…。」 ――ガラッ 襖が開いて入ってきた男は土方だった。 「土方さん。入る前に入室許可を取れと口煩く言ってるのはあなたでしょう?」 「うるせぇ。で、なんだ?お前は自分の事は何にも分からずしまいにゃ病持ちか?」 沖田には目もくれず鋭い目付きで小百合を睨む。 「……分かりま」 「分かりませんじゃねぇよ。少しは思い出す努力もしろ。」 言葉を遮り溜め息混じりに厳しい一言を告げる。 今にも泣き出しそうな小百合を見て沖田は口を開いた。 「土方さん。 小百合さんの事は私が全て引き受けます。診療所にも連れて行って病の有無も調べます。何よりこんな男所帯に来たばかりで疲れているだろう小百合さんにその言い種はないでしょう。」 「……言ったな? ならこいつの事は総司、お前に一任する。だが、余計な気は持つなよ。 分かってんな。」 沖田の返事を待つでもなく土方は踵を返し部屋を出ていった。
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