242人が本棚に入れています
本棚に追加
09/2.27に書いたやつ✨
【蒼穹】
秋斗とシャノン(・ω・)
秋斗視点
「人ん部屋で何してんだよ」
自室の扉を開けたと同時に視界に入りこんできたのは、膝を床につけて、窓の縁に置いた腕に顎を乗せながら耳をぴくぴくと動かし、床についた尻尾をゆるゆると振っているチビ狼の後ろ姿
俺の言葉に振り向きもせずに何かを一生懸命に見ているチビに、はぁ…と一つため息をつきつつゆっくりと近づいていく
「…ちょうちょ」
突如小さく呟かれた言葉
「は?」
それを訝しみながらチビが見ているそれを覗きこむと、
この部屋に一つだけ置かれている小さな観葉植物に蛹から還ったばかりらしい、濡れた羽を持つ一匹の蝶が綺麗なその姿を俺たちの前に露にしていた
――それはたぶん何もないこの部屋にとナギが置いていったもの
この部屋に小さな住人が増えたのはいつからだったか…
今まですっかりその存在を忘れていた
「がんばれ」
優しい風で羽を乾かし蒼穹を目指す蝶をじっと眺めるチビにちらりと目を向けると、色の違う二つの瞳がきらきらとたっぷりの好奇心で輝いていて――
「…食うなよ?」
からかうために頭の上で揺れる耳を撫でながら呟いてやった言葉に
「食わないもんっ!」
チビは…、シャノンは俺の足をぺちりとふさふさの尻尾で叩いてきた
ひらり
ひらり
気付けば、小さな輝きが空に羽ばたく瞬間までずっとずっとチビと一緒に眺めていた
――それは澄み渡った空がどこまでも続く、そんなある日の些やかな出来事
名前もないそれが旅立って行ったのを、少しだけ寂しいと思った
(日常の合間のそんな柔らかな一時が、久しぶりに暖かいと思えた)
最初のコメントを投稿しよう!