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しぶしぶ芽衣は1階の受付へプログラムを取りに向かったが、途中ハイヒールであまりにも足が痛くなり歩けなくなってしまった。
「痛~、なんでこの靴はこんなに足が痛くなるの」
独り言をつぶやき、人気がいない場所へ向かうと、芽衣はひらめいたかのようにニコっと笑い、バッグの中から袋を取り出した。その中には、今日帰りに履いて帰ろうと思っていたいつもの赤い靴が入っていた。
「これ履いて受付まで行っちゃおっと。会場行ったらまたヒールに履きかえればいっか」
芽衣はハイヒールを袋に入れてしまうとすぐに、赤い靴を履いてアンバランスな格好でプログラムを取りに行った。
「すみません、足りなくなったプログラムをもらいにきたんですけど・・・」
「あ、東京都心会社のパーティーの方ですか?急いで下さい、もう北村さんの社長就任パーティーが始まりますから。早く戻ってこのプログラムを配ってきてください」
「急いで?」
「早く早く!」
芽衣は受付の人に急がされ慌てて会場に戻り、赤い靴を履いたままなことも忘れ、急いでプログラムを配った。そしてちょうど配り終わる頃に、いよいよ【北村幸介社長就任記念パーティー】が始まった。司会が紹介すると幸介がステージに現れた。相変わらずの人気だった。
「ふぅ、良かった間に合った」
幸介の真面目なスピーチが始まる。まだ結婚のことに関しては一つも触れていない。芽衣はこれが久々に見る幸介の姿であった。そして司会の紹介でついに社長が出てきた。
「えー、私は今期でこの社長の座を空け渡しわが息子である北村幸介に受け継いでもらうこととなった。これより北村幸介の社長就任における式を始める」
会場はパーティーの雰囲気から一変して真面目な空気が流れた。
「だが、その前に一つ、この式をするにあたって一つ幸介から条件があった。古谷芽衣さん、来ていますか?」
「え?え?」
芽衣にスポットライトが当たり、辺りの注目は一斉に芽衣に集まった。
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