赤い靴のお姫様

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「君があんなに欲しがっていた靴だよ?」 「この靴は私がずっと憧れていた靴です・・・これを履くところを想像していると、なんかお姫様になった気分になっちゃって・・・でもこの靴は、私のためにあるものじゃありません」 会場は芽衣の言葉を真剣に聞くようになっていた。 「だって私はこんな立派な靴を履くような人間じゃない。私以外にもこの靴に憧れていた人はいたと思う。この残り最後の一足を買って、ホントのお姫様になっていた人がいたかもしれない・・・」 「私はおとぎ話の主人公じゃない。悲劇のヒロインでもない・・・ただのわき役。物語の最後まで輝かない人だっているわ。でも、私は自分が輝くために、他の人の光を奪うくらいなら・・・わき役のままでいい・・・」 「誰もがハッピーエンドじゃない・・・何したってダメな人もいるし、人より遅くて、おいてかれたままの人だっている・・・。おとぎ話の主人公だけが輝く世界じゃない」 「私は田舎から出てきたただの掃除婦です。私のいる場所はここにはありません。いくら魔法でこんなハイヒールを履いて背伸びしたって足が痛くなるだけ。いつもこんな高い位置でものを見ていたら、大切なものまで見失っちゃう・・・たとえばこのドレスも、いくら着飾ったって中身は何も変わらない。いくらキレイな色をしてたって、この鮮やかな彩りに大切な自分の色まで見失っちゃいそう。自分の色を表現するのはドレスだけじゃない・・・」
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