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「狩野さんも、母のこと好きになってくれてありがとうございます。でも、こう見えても42歳だし、俺も20だし。他にも、下に4人の子がいるし…ダメですよね。」
若者の言葉を借りるなら、マジでっ!?といったところか。
俺はまたさらに、崩しようもないぐらい顔を大きく崩していた。
自分は役者なのだから、どんな時も、余裕そうな表情ぐらい作れると思っていた。
その自信が、ベルリンの壁の如く、あっという間に壊されることとなろうとは。
「母は、俺が10の時父を亡くして、女手一つで子供5人を育てたんです…俺としては幸せになってもらいたいんですけど…。」
そして、彼女と同じく、敦司君も泣き始めた。
俺はうろたえた。
愛しい人と、その子供が泣いている。
泣かせたくない。愛する彼女を、彼女の家族を。
俺は、表情をきりっと真面目な顔に戻して、深呼吸をした。
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