夏の案内人

え？ 待て待て待て

　お世辞にも大きいとは言えないこの街。まあ、案内してまわるのもさほど時間がかかるわけでもなく、午前中であらかた案内し終わった。

　んで、今は駅前のファーストフード店。ここで、ひとまず昼飯にしようというわけだ。
　ちなみに西沢の奴、「私に失礼な事言ったんだから、お詫びに奢りなさいよ」だとさ。
　……お前が始めに「バカしん」と言ったのはどこへ行ったのだ？　んでもってビンタの意味は？
　チクショー馬鹿野郎。いや、こいつも一応女郎か。

　まったく。それにしてもコロコロ機嫌の変わりやすい奴だ。最初はぶすっとしてたのに、いつの間にかこの笑顔だ。

　店から出ると、西沢は突拍子もなくこんな事を言い出した。

「これから買い物行きましょ」

　……嫌だ。疲れた。眠い。だいたい、初めて顔を合わせた人間とデートまがいの行動をとるのは、俺としては気が引ける。それに――

「れっつごー！」

「うおわ!?」

　おもいっきり腕を引っ張る西沢。どうやら、俺に拒否権はないらしい。