え? 待て待て待て

6/18
前へ
/104ページ
次へ
 さらに時が移って夏休み初日。俺は今、自転車で駅前へと向かっている。  ただ今の時刻、九時三十五分。三十分近く早めに出るのは、ちょっとした、俺の紳士的な心掛けからだ。  さすがにあいつも、こんな早くから来る事はないだろう。  突如、携帯をしまっているポケットのあたりに振動がはしる。  お気づきの方はお気づきだろう。携帯のバイブレーションだ。  呼び出し主は西沢茜。  ……嫌な予感がする。 「もしも――」 「遅い!!」  耳をつんざくような、高く、馬鹿でかい声。せめてボリュームくらいは下げてほしいものである。 「今何時だと思ってるの!?」 「九時三十五分」 「何やってんの!? 遅刻よ遅刻!」  ……どうやったら遅刻になるのだ? その原理を、是非教えてもらいたい。
/104ページ

最初のコメントを投稿しよう!

18人が本棚に入れています
本棚に追加