子捨て谷で赤子は泣く

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《昔々、まだ外国の文化が入って間もない頃、この地に生を受けた幼い命があった。 しかし、望まれない子であった幼い命は、谷の底へと消えていったのである。 黙って子を捨てた父親に母親は怒り狂い、包丁を手に取ると、一切の躊躇いもなく、父親の心臓を突き刺したのである。そして……》 「晋也何見てんの?」 静かな大学の図書館で、突然声を掛けられたものだから俺は驚き、身体をビクつかせた。そして後ろを振り返ると、俺の彼女の彩が立っていた。 「なんだ彩か……」 彩は俺の読んでいた本をチラチラ見ると、ため息混じりに口を開いた。 「はぁ、A県の民話か……またこんな本読んで……本当好きだね」 半分呆れ顔の彩。 「良いじゃん!心スポ巡りは俺の楽しみなんだからさ」 俺は力強く言ってやったさ。我が県の心霊スポットにはほとんど行ったから、何か自信があった。 「じゃあ私と居るのとどっちが楽しいの?」 口を尖らせ若干不機嫌な口調で彩は聞いてきた。 「勿論、心霊スポッ……ドッッ」 即答する俺に彩は鞄を目一杯降りかざすと、俺の顔面めがけて会心の一撃をぶちかましてきた。
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