子捨て谷で赤子は泣く

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座っていた椅子から飛ばされる俺。 空に舞うA県の民話。 鳴り響く椅子の倒れた音。 そして静まり返る図書館。 怒っている彩は走って図書館から飛び出した。 ヤバいと思った俺は、A県の民話を元の場所に戻すと、走って彩を追いかけた。 傾きかけた太陽に赤く染められた大学内にある芝生の広場。そこで追いつくと彩の名前を何度も読んだ。しかし、全くの無視。 俺は肩を掴み無理矢理こちらに顔を振り向かせた。 「おい、話聞けって……」 振り向いた彩は目から涙を溢れさせていた。 「……ごめん」 俺は謝った。彩の涙をみたら何も言えなくなった。まぁ、悪いのは確かに俺なんだけどな。 「もぉ、いいよ……」 涙声でそう言ってくれたことに安堵した。 「もう別れよう」 ……のも束の間だった。 その日俺は彩と別れた。 どうも前から心霊スポットばかり行っている俺が嫌だったそうだ。付き合い始めた頃に比べると、行く頻度は確かに多くなっていた。彩に構ってやることができていなかった。彩はそれが嫌で嫌で仕方なかったらしい。 そして引き金になったのが、今日の一言。彩の『私と居るのと心霊スポットに行くのどっちが楽しい?』の質問に『心霊スポット』と冗談のつもりで言った俺の一言だった。
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