4061人が本棚に入れています
本棚に追加
座っていた椅子から飛ばされる俺。
空に舞うA県の民話。
鳴り響く椅子の倒れた音。
そして静まり返る図書館。
怒っている彩は走って図書館から飛び出した。
ヤバいと思った俺は、A県の民話を元の場所に戻すと、走って彩を追いかけた。
傾きかけた太陽に赤く染められた大学内にある芝生の広場。そこで追いつくと彩の名前を何度も読んだ。しかし、全くの無視。
俺は肩を掴み無理矢理こちらに顔を振り向かせた。
「おい、話聞けって……」
振り向いた彩は目から涙を溢れさせていた。
「……ごめん」
俺は謝った。彩の涙をみたら何も言えなくなった。まぁ、悪いのは確かに俺なんだけどな。
「もぉ、いいよ……」
涙声でそう言ってくれたことに安堵した。
「もう別れよう」
……のも束の間だった。
その日俺は彩と別れた。
どうも前から心霊スポットばかり行っている俺が嫌だったそうだ。付き合い始めた頃に比べると、行く頻度は確かに多くなっていた。彩に構ってやることができていなかった。彩はそれが嫌で嫌で仕方なかったらしい。
そして引き金になったのが、今日の一言。彩の『私と居るのと心霊スポットに行くのどっちが楽しい?』の質問に『心霊スポット』と冗談のつもりで言った俺の一言だった。
最初のコメントを投稿しよう!