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「なるほどな……お前が悪い!」
彩との別れた経緯を全て聞き終わると、栄太は俺に向かって断言した。
「これを機に心霊スポットに行くの辞めたら?子捨て谷で怖い目にもあったしな」
ニヤニヤ笑いながら栄太は言う。完全に俺を馬鹿にしてる……。
腹がたったが、あえて俺は何も言わなかった。
「怒った?」
俺のあからさまに怒っているぞ。という雰囲気を感じとったのだろうか。
「別に……」
「本当かよ?」
栄太はまだ疑っているが、どうでもよかった。
それにしても、何だか今になって別れたという実感が沸いてきたような気がする。
スゲー虚しい……。
さっきまでの恐怖に縛られた俺には無かった感情だった。
「なぁ、もう彩ちゃんと寄り戻す気ないのか?」
栄太が聞いてきたので考えてみた。だけど、今の俺に答えなんて出せなかった。
こうやって栄太といつもの様に会話しているように見えて、全然いつも通りではない。さっきよりは大分ましになったが、いつあの声が聴こえてくるかビクビクしながら会話している。
だから彩の事を訊かれても、今の俺には分からないのだ。只、漠然とある虚しさ以外は……。
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