子捨て谷で赤子は泣く

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だって栄太は霊なんて信じていないのだ。なのに除霊してもらえって……。 「俺もうバイト行かないとならないんだ」 言いづらそうに栄太は言った。 正直一人は辛い。また泣き声が聴こえてくるかもしれない、金縛りにあうかもしれない。だけど、栄太に迷惑ばかり掛けられない。 「……わかった」 「じゃあ、バイト終わったらまた連絡する。色々しなきゃいけないこともあるしな」 色々しなきゃいけないこと? 「何をするんだ?」 「まぁ色々だ。てか、本当時間ないんだ。とりあえずまた連絡するから行くぞ」 俺は栄太に急かされるように、リュックを持ち急いで部屋を出た。 俺が出た後直ぐに栄太は出てくると、玄関の鍵を閉めた。 「じゃあ、行くわ。頑張れよ」 それだけ言うと、あっという間に走り去って行った。 一人になった瞬間に急に不安が込み上げてくる。暫く、泣き声が聴こえてくるんじゃないか、ビクビクしながら耳を澄ました。 ………………。 大丈夫、聴こえてこない。どうやら日中は大丈夫なようだ。 眠たい眼を擦りながら、ゆっくり階段を降り自転車置き場へと向かった。
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