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普通だったら母親に頼るなんて恥ずかしい。だけど今は別だ。誰でもいい。あの泣き声を止めるために誰かが側にいないと駄目なのだ。
扉を力一杯開き、居間に入った。
急にドタバタと下りてきた俺に、母親は何ごとだと言わんばかりの顔でソファに座り、びっくりしながら俺の方を向いていた。
「ちょっと、一体何?」
母親が訊いてきた。
幽霊が怖いからと言うのが恥ずかしい俺。
「いや……別に……」
とりあえず誤魔化し、言い訳を考えた。
「腹減った」
あまり腹は減っていなかったが、時間的に一番良い言い訳だった。
「そう、じゃあ今準備するわ。ちょっと待ってなさい」
そう母親は言うと、立ち上がり台所に行ってしまった。
しまった!!
一人で居間にいる俺。急に緊張感が漂ってきた。何かいそうでいないような異質な空気。
只テレビの音がその空気を和ませている気がした。
窓の外をふと見ると、なにやら異質な気配。よくわからないが、外に何かいる気がしてならなかった。
だから俺は急いでカーテンを閉めた。
少しの安心感。だけど異質な空気はよくならない。いつ何があってもおかしくない。そんな気がしてならなかった。
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